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こんばんは。この前書いた長旅での再会は長編にしたいので、その前に師父スカ小説過去編を書いてみました。昔の小話のあとがきで書いた、にゃんこをこっそり拾った子スカの話です。イシュヴァラ教の教義とか、子スカとか、色々と捏造してます;長くなるのでとりあえず途中まで。
生へのまなざし
砂漠に夕闇が迫る。悠久の時を経て変わることなく繰り返されてきたイシュヴァールの夕暮れだ。
そんな中、イシュヴァラ教の僧院の中庭で小さな影が動く。武僧に入門したばかりの少年。年は七、八歳といったところだろうか、僧衣を身にまとってはいるものの、まだまだあどけなさが残る。
「ここでじっとしてるんだぞ、分かったな?」
真剣な顔で、少年はなにやら言い聞かせている。その目線の先には、小さな黒猫の姿があった。少年の言葉を解している気配はまるでなく、ひたすら目の前の食べ物を食べている。
「おい、ちゃんと聞けよ。見つかったら、おまえもおれも大変なことになるんだからな」
少年の心配をよそに猫は食事を終え、いかにも満足そうに伸びをした。少年はあきれたようにため息をつく。
「ったく、いいよな、おまえはのんきで。おまえが今食べたのって、おれの夕飯だったんだぞ。明日の朝の修練で死んだらおまえのせいだからな。ま、半分食べたからいいけど。あ、そういえば、まだおまえは名前がなかったな。ちゃんときめてあるんだ。『アウレリアン』。今日、教典の講釈で習ったんだ。昔の言葉で『金』っていう意味なんだって。な?かっこいいだろ?」
「何をしている」
少年の背後から、低く、荘厳な声が響いた。少年は飛び上がりそうになるのをかろうじてこらえ、顔をこわばらせたまま振り返った。
「し、師父・・・・・・」
僧院の回廊に立っていたのは、若い武僧だった。穏やかな、しかし厳しい表情で少年を見つめている。
「な、なんでも・・・・・・、ありません」
その言葉とは逆に、少年の声はひどく怯えていて今にも泣きだしそうだ。武僧は無言のまま、少年の足元に視線を落とした。
「猫・・・・・・か。拾ったのか」
「・・・・・・」
「拾ったのかと聞いている」
「・・・・・・はい」
「『我らが神が創りたもうた世界に手を加えることなかれ』。これは、知っているな」
「はい」
イシュヴァラ教の唯一神、イシュヴァラはこの世の創造主だ。地神であるイシュヴァラが創った世界の中で人も動物もありのままに生きるというのがこの宗教の根本的な考え方であるため、動物を飼うことは神の意思に背く行為とされている。例外的に飼うことが認められているのは、馬や牛などのごく限られた種類の家畜だけである。一般の家庭では野犬などに餌をやっているところもあるようだが、何といってもここは僧院。イシュヴァールの中でも、最も厳格に戒律を守るべきところなのだ。
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プロの翻訳家を目指し、バベル翻訳大学院で文芸・映像翻訳を専攻中。
好きなもの・こと
●『鋼の錬金術師』のスカー
●洋楽 THE BEATLES、 QUEEN、 VAN HALEN、 DEF LEPPARD ANGRA、 NICKELBACK、 AVALANCH(スペインのメタルバンド)etc
●読書(マンガ含む)
本:Sherlock Holmes、浅田次郎、言語・翻訳関連の本
マンガ:『鋼の錬金術師』、『るろうに剣心』、『ぼのぼの』、手塚治虫
●剣道
●言葉・語学好き。洋楽の訳詞家・翻訳家志望。