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お待たせしました!昨日やっと翻訳の課題が終わり、ついに『激情を越えて』の第1章をアップすることができました!やれやれ~。なんと去年に続いてまたもや風邪を引いてしまい、今週はずっと不調でした・・・・・・。今日は予定が何もないんで、久しぶりにDVDでゆっくりスカーさんを観てたらなんだかすっかり元気に☆さすが、スカーパワー!!で、そのノリで第1章に修正を加えてアップしたというわけです。
話の都合上、坊やのお母さんを捏造しました;なるべく原作に忠実にしたいんですが・・・・・・。イメージとしては、原作7巻でヨキに詰め寄ってるイシュヴァールの人の中にいる髪を結んだ女性です。坊やが「母ちゃんがイシュヴァール人なんだ!」って言うシーンが印象的だったので登場させてみました。
初めての長編なので、感想などあればどんどんお寄せください!参考にさせていただきます。それでは、つづきからどうぞ。
激情を越えて
Ⅰ.再訪
――「堪えねばならんのだよ」
――「国軍のした事を許せと言うのですか」
――「『許す』と『堪える』は違う。世の理不尽を許してはいかん。人として憤らねばならん。だが、堪えねばならぬ。憎しみの連鎖は誰かが断たねばならぬ・・・・・・」
「・・・・・・スカー。スカー!」
己を呼ぶ声に思考を遮られ、男はふと我に返った。
「ここじゃないのか」
「・・・・・・ああ、そうだ」
「黙り込んだままだったから、どうしたかと思ったよ」
「すまん。少し考え事をしていた」
褐色の肌に紅い目を持つ男と、顔の皮膚がただれた医師。奇妙な旅人二人の目の前には、スラムが広がっていた。この男の民族、イシュヴァール人が暮らすスラムだ。
男がこのスラムを訪れるのは、これが二度目だ。といっても、一度目はとても「訪れた」とは言えない。重傷を負って気を失っていたところをこのスラムに住む少年に救われ、介抱を受けていたのだ。お尋ね者だった男はやがて賞金稼ぎに見つかり、同胞に迷惑をかけまいとスラムをあとにした。一時的にかくまわれていただけなのでとくに懐かしいとは思わないが、それでも同胞が住んでいる場に足を踏み入れると、かすかな安堵感を覚える。
だが、心をなごませている余裕などない。再びここにやって来た男の胸には、新たな使命と、それをなし遂げるのだという強い意志が秘められていた。
「あ、おっちゃん! どうしたんだよ急に? あれから全然戻ってこないから、心配してたんだぜ」
はじけるような声と共に、十歳ぐらいの少年が駆け寄ってきた。淡い金髪に色白の肌。一見するとその風貌はこの国の多数派であるアメストリス人のものだが、つぶらな目は男と同じように深い紅色をしている。生死の境をさまよっていた男を懸命に看病してくれたこの少年の体には、イシュヴァール人の血が半分流れているのだ。
「ったく、ケガも治りきってないのに勝手にどっか行ったと思ったら、また勝手に戻ってくるんだもんな。捕まったって話も聞かねぇから、大丈夫だろうとは思ってたけど」
「すまなかった」
いつもは毅然としている男が子供相手に素直に謝っているのを見て、医者はなんだかおかしくなった。目を細める医者に、少年がふと目をとめる。
「おっちゃん、この人、誰?」
「ああ、マルコーという医者で、共に旅をしている」
「・・・・・・。アメストリス人?」
「そうだ」
「ふうん」
「それより、師父はまだここにおられるか?」
「しふ? ああ、坊さんのことか。うん、南ではドンパチ始まったし、みんなで一緒にいる方がいいからって、あれからずっとここにいるよ。案内しよっか」
かけがえのない人生の師が子供に「坊さん」と呼ばれていることに内心衝撃を受けつつも、「頼む」と言って男は医者と共に少年の後に続いた。
スラムの狭い路地を歩いて行く。両側に並ぶ家はどれもバラックで、かろうじて風雨をしのげる程度のものだ。それでも、家々からは賑やかな声が聞こえ、煙突からゆっくりと立ち上る煙からはイシュヴァール人がこの場所で確かに息づいていることが感じられる。「ひっそりとだが、元気に生き残っておるよ」。このスラムに住む老人から以前聞いた言葉を思い出し、男はわずかに目元をなごませた。
「あ、ちょっと待ってて」
少年は足を止めたかと思うと、元気よく駆け出した。
「おーい、じっちゃ! おっちゃんが戻ってきたぞー!」
その先には、あの老人と、イシュヴァール人の女性が立っていた。長い銀髪を後ろで束ね、イシュヴァールの民族衣装を着ている。少年の母親だ。少年と一緒に自分を介抱してくれたことを男は思い出した。
「おお、若いの」
「ご無事だったんですね。良かった」
男は命の恩人との再会を不器用ながらに喜び、事情を話した。
「でも、長旅でお疲れでしょう? 家と呼べるようなところじゃありませんけど、すこしうちに上がってからにしたら?」
「いや、そのような――」
男はそう言いかけて、マルコーを見た。
「マルコー、師父にはやはり己れ一人で会いに行く。お前はここで待っていてくれ」
「え、いいのかい?」
「ああ。一度己れだけで会って、その後お前と共に詳しいことを話した方がいいと思う」
「そうだね。では、お言葉に甘えてお邪魔します」
「え・・・・・・、おっちゃんはいいの?」
「己れはいい。すまんが、師父のところへ案内してくれ」
少年と男は、スラムの入り組んだ道を進んでいった。
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プロの翻訳家を目指し、バベル翻訳大学院で文芸・映像翻訳を専攻中。
好きなもの・こと
●『鋼の錬金術師』のスカー
●洋楽 THE BEATLES、 QUEEN、 VAN HALEN、 DEF LEPPARD ANGRA、 NICKELBACK、 AVALANCH(スペインのメタルバンド)etc
●読書(マンガ含む)
本:Sherlock Holmes、浅田次郎、言語・翻訳関連の本
マンガ:『鋼の錬金術師』、『るろうに剣心』、『ぼのぼの』、手塚治虫
●剣道
●言葉・語学好き。洋楽の訳詞家・翻訳家志望。