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こんばんは!
お待たせしました。やっと、第3章 の上が完成しましたよ! 予告通り、武僧に入門したころの子スカを師父が回想してます。弟子ちゃんはきっとちっちゃいころから真面目だったんだろうなぁ、という妄想に基づいた捏造です。弟子とそれを見守る師父に焦点を当てたら、他の僧侶とか弟子がなんかだらしなく見えてしまいましたが、本当はそんなことはないはず。この師弟が真面目過ぎるだけです(笑)。
しかし・・・・・・、3章の上だけなのに、A4で4ページになってしまった!! 剣道やってる管理人は、修練シーンを書くのが楽しくて・・・・・・v いや、別に私はこんなに激しくボコられてませんが; うん、きっと子スカはめちゃくちゃ真面目で悔しがりやだったと思う!! あのスカーさんからさかのぼると、どうしたってこういう子どもになるんです。
あと、気付いたらタイトルがハガレンのゲームとそっくりになった・・・・・・。偶然ですので気にしないでください;;
しっかし、ホントに長くなってしまったので、読みづらいかもしれません。すみません;; これで第3章にして、残りは4章にするかなぁ。う~ん、悩む・・・・・・。
修行中の子スカを想像で初めて本格的に書いたので、ちょっと緊張しながらアップしています。拍手メッセで感想をいただけたらうれしいです。お待ちしていますv
それでは、つづきからどうぞ~。
Ⅲ.その背に負いしもの
儂がお前に出会ったのは、もう二十年ほど前になるだろうか。カンダの僧院に入門した弟子の中にいたお前はまだ十、いや、もっと幼かったかも知れん。
武僧とは、イシュヴァラに仕え、聖地イシュヴァールとそこに暮らす民を守る者。民からの信頼も厚く、尊敬されているゆえ、武僧の道を志す少年は多い。だが、たいていの子どもは厳しい修行についていけず、入門から一年も経たぬうちに俗世へ帰される。その者たちに神が与えた役割は、武僧ではなかったということだ。全ては神の意志のままに。これが、イシュヴァラ教の教義の根幹なのだ。
一年後には、五人に一人が残れば良い方だ。仮修行が終わり、いよいよ武僧としての本格的な修行が始まる。夜も明けぬうちに起床し、修練、教典の講釈、また修練。日々、その繰り返しだ。仮修行を無事終えたとはいえ、弟子たちはまだ十前後のほんの子どもである。たいていの弟子は泣き言を言ったり、修練の手を抜いたりしては師にどやされながら、だんだんと聖地の守護者としての自覚を身に付けていくものだ。
しかし、お前は違った。
典型的なイシュヴァール人の風貌をした、どこにでもいそうな少年。武僧を志す者としては、とりたてて俊敏なわけでも、学問に秀でているわけでもない。だた、意志の力が誰よりも強かった。仮修行のときもそうだったが、本修行が始まるとお前の意志の強さは一層際立った。他の弟子が本修行の厳しさに音を上げるころになっても、お前が弱音を吐くところだけは聞いたことがなかった。どんなに厳しい修練にも必死で堪え、手を抜くこともない。その真剣さたるや、一人前の武僧でも真似できぬのではないかと思うほどだったな。
お前の真面目さは僧侶たちの間でも評判だった。ある時、儂が僧院の回廊を歩いていると、同じく武僧見習いを指導している僧侶が話しかけてきた。
「どうですか、弟子たちの様子は」
「ああ、体術の基礎がやっと身についてきたところです。今度、初めて組み手をさせてみようと思っています」
「そうですか。それにしても、あなたが少しうらやましい」
「何がです?」
「ほら、あなたが見ているあの少年ですよ。とても真面目で、いつも修練の手を抜かないという。私が見ている弟子たちときたら、本修行に入ったとたん、急に音を上げる者が多くて」
「本修行の厳しさは、仮修行とは比べ物にならない。十になるかならぬかの子どもにしてみれば、初めのうちは逃げ出したくなるのが当然でしょう」
そう言うと、相手は珍しい物を見るような顔つきで儂を見た。
「へえ。体術に抜きん出て優れ、一人前の武僧からも恐れられるあなたでも、子どもには随分と甘いのですね。いずれにせよ、うちの弟子にもあの少年のような者がいれば、こちらも少しは楽なのですが」
その言葉に、儂は視線を落とした。
「実は、私はあの者のことが少し心配なのです。まだ幼いのに、どんなに辛くてもそれをほとんど顔に出さない。あのままでは・・・・・・」
儂の言葉を遮るように、相手が苦笑しながら軽く手を振る。
「考えすぎですよ。まったく、師弟そろって生真面目なんだから。武僧たる者、常に毅然と構え、何事にも動じてはならない。幼いころからそれができているのなら、それに越したことはないではありませんか。それに、いくら真面目とはいえ、あの少年とてまだ子ども。いずれ泣くこともありましょう」
儂は、その言葉には答えなかった。
そんなお前が儂の前で初めて泣きそうな顔を見せたのは・・・・・・、入門して半年ほどであったから、まだ仮修行の最中だったか。幼いお前が修練の帰りに子猫を拾って僧院の中庭に隠していたところを、儂が見つけた時だ。僧院で動物を飼うことは戒律で固く禁じられている。今すぐ捨ててこいと叱られると思ったのだろう、お前は溢れそうになる涙をこらえながら子猫をかばった。儂は見逃した。お前には、小さき者、弱き者を慈しむ心があったからだ。それは、お前が武僧として生きてゆくうえで、決してなくしてはならぬ物だと思った。お前は優しき心を持ち、動物が好きだったな。それゆえに、弱き者が傷付けられるのが許せなかった。自分自身の苦しみや痛みにはいくらでも堪えることができるのに、まわりの者が傷付けられるのは堪えられない。お前は、そういう者だった。
イシュヴァールの武僧は常に修練を怠ってはならぬ――。本修行に入った弟子たちが何よりもまず叩き込まれるのがこの言葉である。少数民族であるイシュヴァール人は常に外敵の危険にさらされているゆえ、武僧はいかなる時も戦いに備えておかねばならぬ。その気構えを忘れては、神の地はおろか、己の身一つ守ることはできない。弟子たちの中にはよく、己の身を捨てて聖地を守ると息巻いておる者がいるが、それは見当違いだ。神の地を守るのも、全ては命あってこそ。神のもとに行くのは、武僧としての役割を全て果たしてからでも遅くはない。それが神が我らに与えた役割なら。この世は全て、我らが神イシュヴァラの懐なり。偉大なる神は、どのような時も我々を迎え入れてくださる。
「何をしている!! さっさと立たぬか!」
「うっ・・・・・・」
乾いた地面にうずくまる弟子に、容赦なく拳を浴びせる。実際の戦いでは、敵は待ってはくれない。それどころか、倒れたのを好都合といわんばかりに攻めてくるのだ。いかに辛くとも、何があろうと立っていなければならぬ。生きるために。生きて己の役割を全うするために。
「どうした! 死にたいのか!! そんなことでは生き残れぬと、いつも言っているだろう!」
「ご、ご勘弁を・・・・・・」
弟子はその場に伏せ、ぴくりとも動かない。もう息が上がってしまったらしい。こういう者に限って、修練が終わると真っ先に修練場をあとにするのだが。
「もういい。次!」
「お願いします!」
次はお前だった。お前が本修行に入ってから一年が経とうとしていた。お前は見る見るうちに腕を上げ、同輩との手合わせで負けることはほとんどなくなった。儂の拳もさばけるようになってきていた。一年にしては大したものだが、それでも、お前の拳も蹴りも儂をかすることさえない。だが、この時は違った。延々と攻防を繰り返したあと、一瞬、お前の拳が儂の脇腹をかすめたのだ。儂がうかつだったわけではない。お前が自分の手でつかんだ瞬間だった。それがよほどうれしかったのだろう。お前にしては珍しく、かすかに気が緩んだ。儂はそれを見逃さず、みぞおちをわずかに外したところに即座に拳を打ち込んだ。
「つっ・・・・・・!!」
ずさっという音がして、踏み堪えるお前の足元から土煙が上がる。儂の攻めをかわし、さばいたあとに一撃を受けたのだから、たいていの者ならもうとっくに倒れていよう。お前とて、立っているのがやっとのはずだ。それでも、お前は倒れない。儂の教えを守り、懸命に立っていようとしていた。にわかに起こるざわめき。だが、さすがのお前も限界だった。小さな身体がよろめいたかと思うと、鈍い音とともに地面に倒れ込む。
――ここまでか。
もう十分だった。あえて動きを止め、次の弟子に向き直る。その時、背後から声が聞こえた。
「し・・・・・・ふ・・・・・・。おれは・・・・・・、まだ・・・・・・」
どうやら、まだ立てると言いたいらしい。威勢のいい気構えとは裏腹に、今にも消え入りそうな声。そのような体たらくで、師を相手に何ができるというのだろう。
「もういい。次」
ようやく一日の修練が終わり、弟子たちは蜘蛛の子を散らすように僧院に戻っていく。夜明けから修練、講釈、僧院の作務に明け暮れる弟子たち。また明日の明け方から始まる修練を前に、ほんの束の間、心身を休めるのだ。
案の定、「ご勘弁を」と言ってうずくまったあの弟子は、一目散に飛び出していった。まったく、明日の修練でよく灸を据えてやらねば。そう思いつつ僧院に帰ろうと修練場を見わたすと、小さな影が目に留まった。お前だった。何をするでもなく、ただ立ち尽くしている。
「何をしている。帰らんのか」
聞こえているだろうに、こちらを見ようともしない。背を向けたまま、一言も言わず、たたずんでいる。
「そんなに悔しかったか」
辺りは夕闇に包まれていたが、それでも、小さな影が小さくうなずくのが見て取れた。
「少しかすったからって気をぬいて・・・・・・、打たれて・・・・・・、たおれて・・・・・・。全部・・・・・・、おれが悪い・・・・・・」
正直、儂は少し面食らった。あの瞬間から今まで、お前はそのことだけを考えていたのか。修練が終わったことすら、気付いていないのではないかと思うほどだった。
「ああ、そうだな。気を抜いたお前が悪い」
儂がそう言うと、お前は悔しさをかみ殺すように拳をぎゅっと握りしめた。
「でも、まだ立てたのに。師父が『もういい』っておっしゃって・・・・・・」
そうか、と儂は思った。お前は立ち上がろうとしたのに、うずくまってしまった弟子とおなじように、「もういい」と言われたのが悔しかったのだな。
「だが、立ったとしても、お前に何ができた? 立つので精一杯だったのだろう? だから、『もういい』と言ったのだ」
「おれが弱いから・・・・・・」
どうしてお前はそう思い詰めてしまうのだろう。その小さき背中に、どのような荷を負っているというのだ。お前には良き面がたくさんあるのに、一度しくじると、とたんにそのことしか見えなくなってしまう。それが、何よりの難点だった。それを気付かせるのも師の役目か。
「しかし、お前はよくやった。初めて、拳が私をかすったではないか。今日のところは、そこまでだ」
何を言われたのか分からないというような顔で、お前は儂を見上げた。自分が悪いと思っているのに、なぜ褒められているのかが不思議でならなかったのだろう。
「どうした。何を黙っている。何もかも一度に得ようなどと思ってはならん。少しずつ、少しずつ、得たいものに近付いていけばよい。何をあせっているのだ」
お前はしばらく考え込むようにうつむいていたが、やがて、まっすぐと儂の目を見た。
「兄者、父上、母上、それに、ここで暮らす人たちを守りたい。そのためなら、おれはどんなことにもたえ、なんだってしようと、そう決めたんです。だから、おれは強くなりたい」
武僧を志す少年なら誰もが口にするような、ありふれた言葉だった。にもかかわらずこの言葉が心に響いたのは、お前の実直さを儂が誰よりも知っていたからに他ならない。そう、あの時お前の紅き目には、今と同じように確固たる意志が宿っていたな。それゆえに、儂は不安でならなかった。立ち止まらずに突き進み、全てを背負い込むだけでは、お前はやがて・・・・・・。
「そうか。だが、強さだけを求めてはいかん。ほかに、もっと大切なものがある。分かるか?」
「・・・・・・?」
「みなが持っているはずなのに、力を求めているうちに見失ってしまうものだ。何だと思う?」
「・・・・・・分かりません」
「優しさ、だ。力を振り回しているだけでは、自分を見失い、やがて力に支配されてしまう。常にあらゆるものをいたわるのだ。そのためには、まず、自分をいたわらなければ」
「え、自分を?」
「ああ、自分をだ。自分に何ができて、できぬのかを見極めるのだ。自分に優しくできぬ者が、他人に優しくなどなれるはずがない」
納得できないというように、お前は口をつぐんだ。自分を守ることは、弱腰と思っていたのだな。
「自分に優しくするということは、決して己を甘やかすことではないぞ。この地を守るためには、さまざまなことに堪えねばならん。常に強く、己に厳しくあらねばならぬ。しかし、一人で全てを堪えられるほど、人は強くはない。何もかも一人で背負うことはないのだよ」
「だから、たえられるぐらいにおれは強く!」
「いや。己の弱さを知ることも、また強さ。己を見ることができぬ者は、いかなる修練を積もうとも、決して真に強くなどなれない。いずれ、お前にも分かる」
「でも・・・・・・!!」
反論しようと口を開くと同時にくずれ落ちた人影を、すかさず受け止める。先ほどと違い、立ち上がる気配がまるでない。儂はふうっとため息をひとつつくと、眠ったように動かぬ少年をそっとおぶった。
「やれやれ・・・・・・。言っているそばから見栄を張って。ほら、帰るぞ」
この弟子が己を見極めるには、まだまだ長い時間がかかる。それができるようになるまで、師として道を示してやろう。強い意志を秘めたこの少年が、志を遂げようとするあまり行き過ぎてしまわないように。己を、己が持っている優しさを見失わぬように。次第に色を深める夕闇に包まれた神の地を僧院へと急ぎながら、儂はそう誓った。
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プロの翻訳家を目指し、バベル翻訳大学院で文芸・映像翻訳を専攻中。
好きなもの・こと
●『鋼の錬金術師』のスカー
●洋楽 THE BEATLES、 QUEEN、 VAN HALEN、 DEF LEPPARD ANGRA、 NICKELBACK、 AVALANCH(スペインのメタルバンド)etc
●読書(マンガ含む)
本:Sherlock Holmes、浅田次郎、言語・翻訳関連の本
マンガ:『鋼の錬金術師』、『るろうに剣心』、『ぼのぼの』、手塚治虫
●剣道
●言葉・語学好き。洋楽の訳詞家・翻訳家志望。