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『鋼の錬金術師』のスカーに惚れてしまったMs. Bad Girlによる、スカーファンブログ。初めてご覧になる方は、冒頭にあるのサイトの説明を読んでから閲覧をお願いします。無断転載禁止。               Since 2011/09/19
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こ、こんばんは・・・・・・!!
もう12月なので、テンプレを冬仕様にしてみました。
 
『激情~』の続きをやっとこさアップすることができました。今週の早い時期に、なんて言ってウソばっかり! 平日の夜にと思っていたら、仕事が怒濤の忙しさで、帰ったらばたんきゅ~な日々でした。お待たせしてすみません。
 
予告通り、坊やのバックグラウンドを激しく捏造しているのでご注意ください。あと、お母さんが名前を呼ばないのもヘンなので、アニメ第一期から借りて「リック」にしました。まったく、こんなに捏造し放題でいいんですかね。でも、ハガレンの世界観からは外れていないはず・・・・・・!! あと1回でこの章も終わり、いよいよ最終章になる予定です。
 
 
捏造OKな方は、つづきからどうぞ~。

「リック!!」
  母親が少年を呼び止める声を聞いて、ようやく理性を取り戻す。己には到底言う資格がないことをあの少年に言ってしまった。あの日に復讐鬼と化し、師の言葉に背いたのは他でもない己。しかし、口に出した言葉は決して取り消せない。激情に流されるという罪をまた犯した弟子を、師は今どのような顔で見ているのだろう。振り返ってその顔を見ることなど、とてもできなかった。
「すみません。お二人とも、本当に申し訳ありません」
  母親が歩み寄ってきて、マルコーと男に頭を下げた。
「いいえ、私が責められるのは当然のことです。お気になさらないでください。しかし、あんな幼い子にまで憎しみが植えつけられているなんて・・・・・・」
  そう言いながら、マルコーがわななく両手を握りしめる。一度罪を犯した者は、いかなることをしても許されることはないのだろうか。咎人としての己の無力に、マルコーは絶望していた。これだけ善を尽くして償いの道を探しているマルコーが許されぬのなら、いまだに激情に流されている己は・・・・・・。
「いや、己れこそ、取り返しのつかぬことを・・・・・・」
  母親は力なく首を降った。
「いいえ、決してお二人のせいではありません」
悲しみをたたえたその紅い目は、少年と同じ目だった。独り言にも似た口調で、ぽつり、ぽつりと語り始める。
「あの子・・・・・・、リックがあんなにアメストリス人を嫌うのは、内乱のせいだけじゃないんです」
「何? それは一体・・・・・・」
  動揺を隠しきれずに、男は尋ねた。同時に、少年に再会してからずっと抱いていた不安の正体がだんだんとあらわになるような、嫌な予感がした。
「ご覧になってお分かりの通り、あの子にはアメストリス人の血が半分流れています」
 母親は顔を上げ、視線を宙に移した。その目に映るのは、あの内乱が起こる前の、厳しくも素朴で穏やかな、神の地の姿なのだろう。
「あの子の父親に出会ったのは、あの内乱が起こる少し前のことでした。仕事でイシュヴァールに滞在していたあの人は、父がやっていた雑貨店によく来ていたのです。とても穏やかで気さくな人で、店を手伝っていた私にいつも声をかけてくれました。内乱前からイシュヴァールではアメストリスに対する反感が高まっていましたが、あの人はそんなこと、気にも掛けていないようでした。何事にも囚われず、自由に物事を柔軟に考えることができる人だった。私もアメストリス人には警戒心を持っていましたが、だんだんとあの人に心を開き、二人で色々なことを語り合うようになりました。アメストリス人もイシュヴァール人も、理解し合い、共存できる日が必ず来る。あの人はいつもそう言っていました」
 母親が語る、少年の父親の人柄。穏やかで平和と共存を望むその姿に、男は大切な人の面影を知らず知らずのうちに重ね合わせていた。民族や価値観の違いを超えて、全ての人が理解し合えるという信念。その尊さと、アメストリス人にも同じような考えを持つ者がいたことを理解できるようになったのは、ごく最近のことである。
「私たちは恋に落ち、やがて結ばれました。周りからは白い目で見られたけれど、あの人は私といられるだけで幸せだと言ってくれた。どんな困難が待ち構えていたとしても、二人なら乗り越えられると思いました」
 その言葉と共に、柔らかな笑みが母親の口元から消えた。まるで、弱々しく灯っていたろうそくの火が、夜風にふっと吹き消されるように。
「でも、内乱があの人を変えてしまいました。アメストリス人とイシュヴァール人が憎み合い、殺し合う中、あの人はイシュヴァールで疎まれるようになっていった。それまで親しくしていたイシュヴァール人は一人、また一人と離れていき、あからさまな敵意を向けられたり、暴力を振るわれたりすることもありました。両親も私たちが結ばれたことを快く思ってはおらず、勘当同然になってしまって。あの人は追い詰められていきました。だんだんと人を信じられなくなり、ついには、私のことも信じてくれなくなってしまったんです。そして、内乱が起きて3年後にあの子が生まれました」
 
――「イシュヴァール人からこんなに憎まれている僕が、イシュヴァール人との間に生まれた子どもを育てられるわけないだろう?! 家族もろともイシュヴァール人に殺されるかもしれないじゃないか!!」
――「そこまで思うんだったら、一緒に逃げましょう。私は、あなたとならどこだって行くから」
――「いや、もう誰も信じられない」
――「そんなこと、言わないで。私は、あなたといられればそれだけでいいの」
――「本当に、そう思ってるのか? 親に勘当されてまで、アメストリス人といたいのか。お前も本当は、僕と一緒になったことを後悔してるんじゃないのか? お前も所詮、イシュヴァール人だろ?」
――「あなた、何言ってるの・・・・・・?」
――「無理だったんだ。文化も習慣も違う民族が理解し合うなんて。ましてや、家族になるなんて。もう、別れよう。僕には、赤目の妻も、子どもも、いらない」
 
「そんな。なんという・・・・・・」
   「赤目」とは、かつてアメストリスで広く使われていたイシュヴァール人に対する蔑称である。イシュヴァールの血の証である紅き目を貶めるこの呼び名に、男は昔から激しい憎悪を抱いていた。痛みに堪えられず、自らを慕う者までも傷付け、捨ててしまった父親。そんな男に兄を重ねてしまったかと思うと、恥にも似た、えも言われぬ感情が込み上げてくる。そして、その男が母親と幼いあの少年に負わせた深き傷を思うと、激しい憤りを覚えた。 燃えるような怒りを噛みしめるように歯を食いしばっても、こらえきれず、思わず身を乗り出しそうになった男の肩を、強い力が引き止める。ふと振り返ると、師が何も言わずに男を見つめていた。弟子を制する厳しさと、諭す優しさを、その紅き目にたたえて。
「あの人はイシュヴァールから去っていきました。その後あの人がどうしているかは、私にも分かりません。イシュヴァールに身寄りをなくした私は、まだ赤ん坊だったリックを連れて内乱初期のイシュヴァールを出たんです。スラムを転々として、このスラムにようやくたどり着きました。私たちを受け入れてくださったここの方たちには、本当に心から感謝しています」
  母親の言葉に応えるように、住人たちが静かにうなずいた。混血の子どもを連れた女性が一人国内を放浪する苦労は、想像するに余りある。この親子を受け入れた住人の懐の深さと絆の強さには、感じ入るばかりである。
「イシュヴァールを破壊したアメストリスと、私たち親子を置いて去っていったあの人を憎んでいないと言えば、嘘になります。それでも・・・・・・、あの人の夢を、私は信じていました。信じたかったんです。でも、あの人にとって、夢は結局、夢でしかなかった。夢はあの内乱で、あっけなく崩れてしまいました。あの人はきっと・・・・・・、現実に、絶望してしまったんですね・・・・・・」
 その言葉が突き刺さるように胸に響き、男は密かにたじろいだ。胸が締めつけられるような痛みを感じる。内乱が激しさを増し、憎しみが渦巻く中でも決して希望を捨てず、平和と調和を求め続けた兄。そんな兄の語る言葉を夢物語と決めつけて切り捨てたのは・・・・・・。
 
――「兄者!! また錬金術か! アメストリスがイシュヴァールを蹂躙しているというのに、なぜわざわざ奴らの技術などに手を染める?! 己れにはどうしても理解できん!!」
――「まぁまぁ、そんなに怒るな。錬金術は正しく使えば、本当に人のために役立てることができる技術なんだ」
――「奴らの技術に正しいも何もあるか!! アメストリスは錬金術とやらを軍事転用し、イシュヴァールを焼き滅ぼすつもりなのだぞ。奴らはすでに何千という民の命を奪っている。この上、錬金術などという強大な力を用いたらどうなるかなど、火を見るより明らかだろう? そんなもの、さっさとやめろ! まったく、こんな時に兄者は・・・・・・」
――「こんな時、だからこそだ」
――「は?」
――「こんな時だからこそ、錬金術で人々を救う方法をなんとしても探したい。アメストリスの錬金術師にも、そう思ってる人たちがいると思うんだ。錬金術という共通の技術を通してイシュヴァールとアメストリスが理解し合えれば、こんなに素晴らしいことはない。お前は、そう思わないか?」
――「イシュヴァールとアメストリスが理解し合うなど・・・・・・、そんなことは、夢物語に過ぎん」
――「そう、かもしれない。でも、夢物語だとしても、私は夢を追い続ける・・・・・・」
 
――現実に絶望し憤慨し、兄者の理想に心を閉ざし、怒りさえぶつけたのは、まさに己れではないか。しかも、己れは夢を見ようともしなかった。己れには・・・・・・、その父親の理不尽を、責める資格さえない。
 
「父親のことを知ったリックは、アメストリス人全体に強い警戒心を抱くようになりました。内乱が終わってもイシュヴァール人はイシュヴァールに帰ることができず、各地でスラムを作って生きていくしかありません。そんな中で育ったリックがアメストリスに反発するのは、仕方のないことなのかもしれませんね。それでも私は、あの人の夢をリックに伝えたかった。あの人が私たちを捨てたのだとしても、あの夢はやはり大切なものですから。そう言ってもあの子は、『なんでそんな奴の味方をするんだ』と言うばかりで。あの子に憎しみを植えつけることだけは、避けなければと思っていたのに・・・・・・」
  悲しみに暮れる母親の姿は、あまりに痛々しかった。しかし、男にはかける言葉もない。口を固く結んでうつむくことしか、できなかった。その時、男に寄り添うように母親が一歩歩み寄り、角張った武骨な顔に温かいまなざしを向けた。
「あの子は、あなたのことが大好きなんです。あなたがここを出て行ってから、ことあるごとに『おっちゃん、どうしてるかな? いつか戻ってくるかな?』と言っていました。だから、こうして戻ってきてくださって、あの子は嬉しかったはずです。口が悪くて、ご迷惑ばかりかけてしまいますが・・・・・・、本当は、あなたのことを父親のように慕っているんです」
  言葉を重ねれば重ねられるほど、胸が苦しくなる。傷だらけの男をかくまい、懸命に介抱してくれた少年。その献身に感謝していたのに、男は少年の無邪気な好意に背を向け続けた。自分は他人の好意に触れ、それを受け取るに値する人間ではないと思っていたし、今でも思っている。それでも、あの少年はずっと、自分を慕っていたというのか。少年の思いに考えが及ばず、幼い心を傷つけてしまった自らの言葉が、悔やまれてならなかった。
「父親などと・・・・・・。それなのに己れは、あのようなことを口走ってしまった」
「いいえ。あの子のところに行ってやってください。あなただからこそ、あの子に伝えられることがきっとあるはずです」
「しかし・・・・・・」
  何と答えればよいか分からぬまま視線を泳がせていると、師と目が合った。先ほどとは違う、穏やかさと威厳に満ちたいつも通りの表情で、男を見守っている。
 
――お前が、行ってやれ。
 
  師の紅き目は、そう言っていた。

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プロフィール
HN:
Ms. Bad Girl
性別:
女性
職業:
会社員
自己紹介:
都内に住む20代。

プロの翻訳家を目指し、バベル翻訳大学院で文芸・映像翻訳を専攻中。

好きなもの・こと

●『鋼の錬金術師』のスカー
●洋楽 THE BEATLES、 QUEEN、 VAN HALEN、 DEF LEPPARD ANGRA、 NICKELBACK、 AVALANCH(スペインのメタルバンド)etc

●読書(マンガ含む) 
本:Sherlock Holmes、浅田次郎、言語・翻訳関連の本
マンガ:『鋼の錬金術師』、『るろうに剣心』、『ぼのぼの』、手塚治虫


●剣道

●言葉・語学好き。洋楽の訳詞家・翻訳家志望。

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