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『鋼の錬金術師』のスカーに惚れてしまったMs. Bad Girlによる、スカーファンブログ。初めてご覧になる方は、冒頭にあるのサイトの説明を読んでから閲覧をお願いします。無断転載禁止。               Since 2011/09/19
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こんばんは。
 
やっと、やっっっと、7章の続きを書くことができました! お待たせしました。しかし、色々書いてたらすごく長くなってしまったのでご注意を。いつものアップ分の2倍くらいあり、長すぎたので、分割してアップしてます; やれやれ~。これで7章が終わり、次回からは最終章に入ります。最終章は前から練っていて、原型はできてます。後は肉付けするだけなんで、次回は早めにアップ・・・・・・したいです!
 
この前、『焦香』の泰助さんに「修行時代の子スカが寝坊して師父に起こされる」っていう師父スカ的に素敵過ぎるネタを頂いたので、その短編も書きたいです~。実は今度の火曜から毎年恒例の剣道の寒稽古が始まるので、自戒の意味を込めて(ホントか?)今日書きたかったんですが、『激情~』の続きでいっぱいいっぱいでした(汗)。寒稽古明けに自分へのご褒美として書くか~v
 
それでは、つづきからその1をどうぞ。

  少年は小屋の裏にうずくまっていた。膝を抱え、そこに顔を埋めている。 男は一歩ずつ近づいていき、寄り添うように小さな背中のそばに立った。
「・・・・・・すまなかった」
「何がだよ」
「お前のことを、イシュヴァールの民ではないと言った」
「もういいよ。あれはオレが言い過ぎたんだし」
  少年はそれきり黙り込み、地面を見つめていた。小屋から漏れた光が乾いた土を照らし、その中で人の影が揺らめくのを、何も言わずに目で追っている。
「リック」
男は静かな低い声で、少年の名を呼んだ。
「その名前、嫌い」
  立てたひざに顔を埋めたまま、少年はもごもごと言った。
「なぜ」
「アメストリス人の名前だから。・・・・・・あいつが、付けたんだ」
「父親のことか」
「あんなヤツ、父親じゃねぇ」
 少年はまた黙り込んだ。冬の夜風が静かに吹き、二人の間を通り抜けていく。男はただじっと、少年が再び口を開くのを待っていた。
「捨てるんだったら、なんで名前なんか付けたんだよ・・・・・・」
 顔も温もりも知らぬ父親に向けられたその声は、あまりにも弱々しく、悲痛だった。明るく活発な少年でさえも、あの内乱が残した深き傷と必死で葛藤している。それを思うと、男の心は悲しみで暗く陰った。男はもともと人の話を辛抱強く聞く方だが、慰めやいたわりの言葉をかけるのは苦手だった。安易に慰めると人の痛みを軽んじることになる気がして、結局押し黙ってしまう。さらに罪を重ねた今となっては、他人に温かい言葉をかけ、希望や理想を説くことなどできるはずがない。暗い思索に沈んでいると、まるで独り言のように、少年がぽつりと言った。
「おっちゃん」
「何だ」
「ちょっと、聞いてもいい?」
「ああ」
  しり込みするように間を空けてから、少年は男に向かって顔を上げた。
「ほんとの名前、何ていうの?」
「己れには、名乗る名などない」
「なんで?」
「捨てた」
「だから、なんでだよ? おっちゃんはイシュヴァールで生まれて、イシュヴァールの武僧で、ちゃんと名前があるんだろ?イシュヴァール人の名前が」
 かつて、誇りを持って呼んだ己の名。父が、母が、そして兄が、愛情を込めて呼んでくれた名。その名は、己が己であることの、紛れもない証だった。喉まで出かかったその音を必死の思いで飲み込むと、言い表せないような鈍い痛みが胸の奥に広がった。
「おっちゃんは・・・・・・、自分がイシュヴァール人なのがいやなの?」
  不意に発せられた問いに戸惑って足元を見下ろすと、己よりわずかに淡い紅色の目が、真摯にこちらを見上げていた。絶望の深淵に沈んでいたときでさえ、己の出自を憎んだことなどなかった。いかに虐げられ、踏みにじられ、全てを奪われようとも、それだけは揺らぐことがない。
「違う」
「じゃあ、なんで捨てたりするのさ? おっちゃん、坊さんのことも、ここのみんなのことも、イシュヴァールのことも大好きなんだろ? だったらなんで――」
「大切であるがゆえに、捨てねばならないものもある」
  己に言い聞かせるように、男は言い切った。
「オレ、分かんねーよ! なんで、大事なものを捨てるんだよ!! おっちゃんは・・・・・・、おっちゃんは、ちゃんとしたイシュヴァール人なのに!!」
  はっとして見ると、少年の紅き目がうるんでいた。胸に突き刺さったとげの痛みにじっと堪え、男を見つめている。その心を縛りつけている苦しみが、だんだんと伝わってきた。自分は憎しみに任せ、多くの命を奪った。その上、激情に駆られこの少年の「大事なもの」を傷付けてしまった。そんな自分には、この少年を諭す資格などない。それでも、幼い心の痛みを和らげ、己のような「膿」が生まれるのをくい止めることができるのなら・・・・・・。

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プロフィール
HN:
Ms. Bad Girl
性別:
女性
職業:
会社員
自己紹介:
都内に住む20代。

プロの翻訳家を目指し、バベル翻訳大学院で文芸・映像翻訳を専攻中。

好きなもの・こと

●『鋼の錬金術師』のスカー
●洋楽 THE BEATLES、 QUEEN、 VAN HALEN、 DEF LEPPARD ANGRA、 NICKELBACK、 AVALANCH(スペインのメタルバンド)etc

●読書(マンガ含む) 
本:Sherlock Holmes、浅田次郎、言語・翻訳関連の本
マンガ:『鋼の錬金術師』、『るろうに剣心』、『ぼのぼの』、手塚治虫


●剣道

●言葉・語学好き。洋楽の訳詞家・翻訳家志望。

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